コレはデートじゃない。 デートじゃないったらデートじゃない。 そう自分に言い聞かせる。 よく考えれば、男の子と待ち合わせで何処かへ出かけるなんて、人生初の事だけど、全力で目を背ける。 待ち合わせ場所のポチ公前は、休日という事もあって人で溢れかえっていた。 まだ相手は来ていないらしい。 待ち合わせの相手、忍足くんは、我が氷帝学園でも1、2を争う人気者。 非公式だけど、ファンクラブまであるらしい。 そんな忍足くんと何から何まで普通の私がどうして恋人同士のデートのように待ち合わせなんてしているのか。 それは、互いの従兄弟が先日めでたく夫婦になったからだ。 結婚式で忍足くんに親戚認定されてしまったのが、遠い昔のように感じる。 コレが夢だったら、どんなに良かったか…! だが非常に不本意な事に、コレは現実だ。 そして今日、その従兄弟夫婦の新居にお邪魔するのだ。 (でも絶対、デートじゃないから…!) そう、忍足くんとは他人なのだ。 ただ最近、ちょっとした知り合い程度になったような気もするけど、それだけで。 今日は単に、目的地が同じなだけだ。 (そう、これは決してデートなんかじゃな…「待った?」 「おおおお忍足くん?!」 「遅れて堪忍なー」 いつの間にかやって来ていた忍足くん。 時計を見ると、待ち合わせ時間ぴったりだった。 「時間ぴったりだから、大丈夫だよ」 「そうか?なら良かったわ。それにしても……」 忍足くんが、じっとこちらを見てくる。 見ないでくれと拒否したくなるのを、ぐっと堪えた。 美形にまじまじと見られるなんて、慣れているはずもなく、自然と顔に熱が集まってしまう。 「………な、何ですか?」 「ちゃんの私服姿、初めて見たわ。めっちゃ可愛えなぁー」 にこにこと、普通の中学3年生なら恥ずかしがる事をさらりと言う忍足くん。 言われたこっちは、かなり恥ずかしい。 「そんな事は…!………忍足くんの私服の方が、カッコいいですよ」 本当に、忍足くんの私服姿は目に眩い程にカッコいい。 さっきから、周りの女の人がちらちらとこちらを見てくるのは、気のせいではないだろう。 普段の変態な発言と奇行さえなければ、私もファンになっていたかもしれない。 黙っていれば、美形なのに…本当に惜しい人材だ。 それにしても――― 忍足くんの私服姿を拝んだなんてファンに知られたら……まず間違いなく殺されるな。 「ほな、行こか」 と、私の手を取り先へ行く忍足くん。 「おおおお忍足くん、手、手離して…!」 「ええやん。デートなんやし。人多いから離れてしまうやろ」 デートじゃないですっ! そう突っ込む暇も無く、忍足くんは私と手を繋いだまま、ずんずんと先へ行ってしまう。 半泣きで付いて行く私。 忍足くんは歩くのが遅い私に歩調を合わせてくれているので、転ぶ事は無い。 さり気なく、車道側を歩いて人ごみも無理せず歩いてくれる。 そういう気遣いは完璧なのに、なんで私の気持ちを解かってくれないのか! (もう、嫌だ…!) 今日はまだ始まったばかりなのに…… 正直、もう帰りたいです。 +++あとがき+++ 1話に詰め込もうかと思ってたんですが、長くなりそうなのでとりあえずココで切ります。 ここ最近のアンケで『他人』が常に1位でした…! 変態妄想な忍足ですが、皆さん気に入って頂けてるみたいで、何よりですv さて、今回から各話ごとに題名を付けてみました。 ぶっちゃけただ単に、ページタイトルに付けていた副題をメニューにも持ってきただけです。 全部『他人です』と言い張ってますw こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました! back/next |