、これネズミーのお土産ね」

「やった!ありがとう、りっちゃん」


月曜日の朝、憂鬱な週明けを吹き飛ばすかのように、友人のりっちゃんが某ネズミの国のお土産をくれた。

お土産の中身は、美味しそうなクッキー。

昼休みに早速二人でつまみつつ、世間話に花を咲かせる。


「ネズミー、面白かった?」

「うーん、面白いには面白いんだけど…人多過ぎ!」


昨日の事を思い出したのか、顔をしかめて「なんであんなに人がいるのよ」とぶつぶつ一人呟くりっちゃん。

その様子から、年上の彼氏さんとラブラブデートというわけにはいかなかったのだろう。


「で、は結婚式どうだった?」

「ウェディングドレス、すっごい綺麗だったよ!」


「ブーケは後一歩だったんだけど、鬼気迫った独身のお姉さんたちに獲られちゃったー」と報告しながら、忍足くんの事をぼんやりと思い出す。

昨日の事が、まるで夢のようだ。

いや、実際夢だったのかもしれない。

うん夢だ。夢にしとこう!

そう都合良く一人で自己完結していると、教室の隅から黄色い声が上がった。


「な、何?!」

「テニス部の誰かでも通ったんじゃない?」


りっちゃんの呆れたような声に、なるほどーと思いながらちらりと廊下側を覗くと――――


「……あ」


やばい、目が合った。

しかも、こっち来るし…!


ちゃん、早速遊びに来たでー」


や め て く れ !


思わずそう叫びたくなる位にあっさりと、忍足くんがやって来た。

























「………忍足くん」

「いややなぁ、侑士って呼んでって言うたやんか」


侑ちゃんでもええでー!

にっこりと、他意の無い笑顔で忍足くんが言う。

この人は、自分がクラス中の注目を浴びているのが分からないのだろうか…。


「お、クッキーやん」

「………どうぞ」

「ええの?それじゃあ遠慮なく…」


と、忍足くんはりっちゃんのお土産のクッキーを一つつまんだ。

本当は今すぐ自分のクラスへと帰って貰いたいのだが、面と向かって言えるわけが無い。

こっちを見ているクラスの忍足ファンたちの目の色が変わってきているのは、気のせいでしょうか…!

っていうか私、この人とは他人だよね?

ひぃっ、忍足ファンが殺気立ってる、殺気立ってるよぅ…!!!


「おい侑士ー!何やってるんだよー」


と、更に忍足くんを見つけた隣のクラスの向日くんがこの場に乱入した。

どいつもこいつも、違うクラスにずかずか入ってくるなよ…!

私の心の叫びなど聞こえるはずも無く、忍足くんと向日くんは会話を続ける。


「こいつ誰?新しい彼女か?!」

「ちゃうって、親戚や」

「はぁ?……同じ学校に親戚いるなんて、聞いてねーぞ」

「そら、昨日できたんやもん」

「……はぁ?!」


疑問符だらけの向日くん。

そりゃあそうだろう。

そんないきなり親戚なんてできるもんじゃない。

でもね、忍足くん……


私たち、他人ですから!


「ちょっと、どーゆー事よ?」


ずっと固まっていたりっちゃんが、我に返り小突いてくる。


「どーもこーも……うん」

「答えになってないって!」


がくがく揺さぶられて、しっかりしろなんて言われるけど、意識はどんどん遠のいていく。

もう、現実世界に返りたくないよ…!


「従兄の奥さんの従妹って………ほぼ他人じゃねーか!


向日くん、ナイス!

やっぱり忍足くんと私は、他人だよね!

そう自分の見解の正しさを再確認でき、きっぱり言ってくれた向日くんに内心拍手を送っていたら――――


「こっちが身内と判断したら、身内や!たとえ血は繋がっていなくとも、心で繋がっとるんや!!!


と、忍足くんが言い切った。

っていうかそれ、どういう理屈ですか?

っていうか私、貴方の身内公式認定ですか?


「―――ってわけで、学校でもよろしゅうな、ちゃん」


呆然とする私にも構わず、忍足くんが私の手を掴み、無理矢理握手をする。



(うそーーーーーー!)



心の絶叫が、体中に鳴り響いた。


















+++あとがき+++
忍足がアホでどうしよう…。
っていうかコレ、夢じゃないYO!
でも、自分的に書くの楽しいらしく、遅筆のクセに物凄い勢いで書き上げちゃいました。
………色々と、ごめんなさい;;

こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました!







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