「おい、どういう事だ?」


その問いに、は何も答えずにいた。

美依奈の目には、何が起こったのか解からなくて、答えあぐねているとでも映っているのだろう。

ふと美依奈を見ると、跡部の胸の中でこちらを横目で見ながら嫌な笑みを浮かべていた。

無論、にしか見えない位置で、だ。

それに気づかない跡部たちには、無表情で身じろぎもしないに、益々不信感を募らせている。


「おい、聞いてんのか?!」


痺れを切らした跡部が、を一喝する。

はその声に、びくりと体を振るわせた。

もちろん、わざとだが。


「違うの、景吾!」


美依奈が、跡部をなだめるように抑えた。


「美依奈が悪いの!美依奈がさんを怒らせちゃったから……!」


美依奈は、表面上はを庇うように訴える。


さんに、もう少し仕事してくれるように言っただけなんだけど……さんも慣れてないし、しょうがないよね」

「はぁ?なんだよそれ!」

「美依奈が悪いわけじゃないやん!」

「でも、美依奈の言い方が悪かったのかもしれないし…」


顔を伏せる美依奈に、皆の同情が集まる。

もう完全に、が加害者で固まってしまった。


「おい、!どういう事だよ!!!」

「…っ違います!」

「何が違うんだよ。言い訳すんなっ!」


掴みかかってきた向日や、周りに聞こえるように言い募る。


「私が玉城さんに仕事するように言ったんです!そしたら玉城さんがっ…」

「ひどいっ、さんのために言ったのに…そんな言い訳するなんて!」

「お前……最低やな」


忍足の吐き捨てるかのような一言で、完全に悪役が決まってしまった。

皆、一人に冷たい視線を送っていた。

そんな冷たい視線を浴びながら、は心底呆れていた。

証拠も無く、状況だけで判断して決め付ける。

なんて愚かな者たちなのだろう。

の手紙によく書かれていた、『大切な部活の仲間たち』とは、印象が大分違う。

ここまで馬鹿が揃っているとは、思わなかった。

演技していなければ…素の自分だったら、ここにいる全員蹴り飛ばしている所だ。


(やば……血管ブチ切れそう)


実際そんな事になるはずもないが、びきびきと青筋が立ちそうになる。

ここで切れたら、全てが水の泡だ。

眉一つ…表情一つ動かすのも注意して、はゆっくりと顔を伏せた。


「本当に……違うんです」


最後の足掻きとばかりに、小さく呟く。

たが、すでにの言う事を信じる者は、誰もいなかった。







美依奈を疑う者すら、誰もいなかった。










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+++あとがき+++
ここまでシリアスな展開になるとは思ってませんでした;;
普段ギャグしか書かないので、中途半端かもしれませんが、自分的には結構やっちゃった感が…。
人を嵌める描写とか、イジメ描写とか、かなり難しいですね;;
これからどこまでいくのか、自分でも分かりません。。。
生暖かくでも見守って頂ければ、嬉しいです。

こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました!