![]() 『じゃ、放課後テニスコートまで来てねv』 美依奈にそう言われ、授業終了のチャイムが鳴ると共に、は言葉の通りにテニスコートまで向かった。 途中、事務室まで転校手続きで必要な書類をいくつか届けなければならなかったので、少し遅くなったが、問題は無いだろう。 (それにしても……なんでこんな無駄にでかいんだろう) が以前通っていた中学も、地方で公立という事もあってそれなりの広さと生徒数を誇っていた。 だが、都内で私立であるはずの氷帝学園は、それ以上の広さと生徒数を有している。 少子化のご時世にこれだけの生徒数がいて、尚且つ授業料も偏差値も馬鹿高の名門校とは……尊敬さえ覚えてくる。 (まぁ、どうでも良いか) 今は、余計な事を考える時では無い。 一つ深呼吸して雑念を振り払ったは、敵の本陣であるテニスコートへと足を踏み入れた。 ―――敵の本陣であるそこは、正に戦場だった。 ただし、女の。 テニス部ファンなのか、大量の女生徒たちが黄色い声を上げながら観戦用のスタンドに張り付いていた。 これは、かなり五月蝿い。 なんとかスタンドの最前線に立ったは、近くにいた部員らしきコートの中の人におずおずと話しかけてみた。 「………あの、玉城美依奈さんに言われて来たんですけど」 「アーン?」 こちらを振り向いた部員(らしき人)を見て、は一瞬固まった。 (この顔は………部長の跡部景吾じゃん) そういえば、ここだけやけに黄色い声が上がっていた。 今だって、殺気混じりの視線と『何あいつ、抜け駆けじゃん!』とか『ブスが跡部様に話かけんじゃねー』とか聞こえている。 (………っていうか、丸聞こえだし) こんな会話、好きな人を前にしてよくできるなー。と、は感心した。 自分が性格悪いの、バレバレじゃないか。 「美依奈の紹介?ああ、あのマネージャーの件か……」 女子の会話が聞こえてないのかそれとも慣れているのか、跡部は気にする素振りも見せず、を値踏みするかのような不躾な視線を送った。 敵意と悪意だらけの視線を周囲から送られ続けているは、気付かれないようにそっと息を吐き出した。 正直、あまり気持ちの良いものでは無い。 「あ、さん!来てくれたんだー!」 に気付いた美依奈が、コートの中から駆け寄ってくる。 「そこの入り口からコートの中入って!皆に紹介するから」 「え、でも……」 「良いから良いから!」 そう言い、『おい、まだ許可した覚えは……』とか言っている跡部の声を綺麗に無視して、美依奈はを強引にテニスコートの中へと招いた。 「しょうがないでしょ、美依奈一人じゃフォローしきれないんだもん」 「だが、監督の許可も……」 「あれー、サンやん」 跡部たちのやり取りに気づいたレギュラーらしき人々が、ぞろぞろと集まってくる。 その中には、もちろんと同じクラスである忍足の姿もあった。 「ね、景吾お願い!美依奈一人だと本当に大変なの!」 「……ちっ、しょうがねーな。おい、お前明日から来い」 渋々といった感じで上目遣いの美依奈に折れた跡部は、に言い放った。 は、跡部のその命令口調に当然カチンと来たが、我慢我慢と自分をなだめた。 ここでキレたら、全てが終わってしまう。 「はい。………よろしくお願いします」 とりあえず形だけでもと挨拶をしたが、これだけは断言できた。 目の前の男………跡部景吾とだけは、絶対に馬が合わない。 集まってきたレギュラー陣は、なにが起きたのか解からず、ぽかんとしていた。 back/next +++あとがき+++ 相変わらずキャラとの絡みが少ないですね;; とりあえず、テニス部潜入できたのでこれからは少しはマシ……に、なるハズ! これからが本番なので、気合入れて頑張ります! こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました! |