学園天国〜入学試験編〜
五日目:グループ戦・午後
ダダダダダダダダッ……
機関銃の音が、そこかしこからする。
は頭を低くして、頭上を掠める弾丸をやり過ごした。
本日の試験は、今までの中で一番豪華な試験だった。
まず、セットからして違った。
建物、ジャングル等、さまざまな戦場を想定してのセットは、軍が作っただけあって立派なモノだ。
たかだか入学試験なんかにこんな立派なセットを使って良いのかと、ついつい思ってしまうほどだった。
弾は全てペイント弾で、当たれば蛍光色の血糊が飛び散る仕組み。
急所を撃たれたら、即死亡になる。
もちろん、体術などで相手を気絶させるのもOKだ。
勝利条件は単純明快――――相手チームを全滅もしくは投降させること。
だが、これが中々に難しかった。
まだ何の訓練も受けていない素人とはいえ、MSパイロットを目指すほどのコーディネイターたちのサバイバル戦だ。
トーナメント式で勝ち残っていくに従って、どんどんと相手のレベルが上がっていく。
受験者たちは、まだ慣れない仲間たちと一緒に、それぞれ苦戦を強いられていた。
だが――――
「ディアッカそっちだ!」
「わあってる!」
「雑魚共どきやがれぇっ!!!」
「イザーク、煩いです」
「何をぉ?!腰抜け〜」
ダカダカと機関銃を撃ちまくりながら喋くっている少年たちは、対戦チームを余裕で蹴散らしていた。
すでに決勝まで行っているのに、全員一発も銃弾が当たっていない。
対戦リーグが2つに分かれているため、次は向こうのリーグの優勝者と戦わなくてはいけないが、この勢いならば、間違いなく1位になるだろう。
楽勝で、勝ち進んでいた。
(なんで〜〜〜っ?!)
試験に落ちることを狙っているにしてみれば、迷惑この上ない話だ。
……こうなったら、自分で積極的に当たっていくしかない。
は反撃するフリをして、前に飛び出していった。
「危ないっ!」
「え?」
ぐいっと後ろに引かれ、また元の位置に戻ってしまった。
目の前には、銀のおかっぱが風になびいている。
……どうやら、庇ってくれたらしい。
「あ、ありがとうございました」
とりあえずお礼を言ったが、内心は腸が煮えくり返っていた。
(ちっ、コケシめ!余計なことを…!)
そんなのお腹の中には気づかず、コケシことイザークは頬を染めてぷいっと顔を背けた。
「ふん、気をつけろよ///」
ビーーーーーッ
ぶっきらぼうな言葉の数秒後に、彼らの勝利を告げるブザーが鳴った。
休憩時間、は精神統一にひたすら励んでいた。
思い通りに事が進まない事で、イライラが頂点まできている。
今までの苦労を思い出して、よぉっく自分に言い聞かせる。
確かに、今の状況は美味しい。美味し過ぎる。
自分が動かなくても、楽々勝ち進めるし、周りはコーディネイターの中でも群を抜いた美少年だらけだ。
しかも、皆自分を護ってくれる。
このまま行けば、美少年のハーレムと女王様な自分も、夢じゃない。
敵チームも、容赦なくぶっ飛ばせば、少しはストレス解消になるだろう。
だが、ここでキレたら今までの苦労が水の泡だ。
一時のテンションに身を任せてしまったら、この先厳しい軍隊生活が始まってしまうのだ。
そして、アカデミーを卒業したら、ほぼ軍人で構成されている恐ろしい親戚一同にこき使われる事確実だ。
それだけは、避けたい。
絶対に、避けたい。
は深々と溜息を吐いた。
もう、決勝まできてしまった。
今更250位以下を目指すのは、不可能だ。
それでも、これ以上成績を上げるわけにはいかない。
こうなったら、あいつらでさえ苦戦するような敵である事を、祈るしかなかった。
ぺしぺしと頬を叩き、気合を入れてみる。
「頑張りましょうね、」
ニコルの言葉に、心とは裏腹には笑顔で頷いた。
「うん」
とにかく、不自然でないようにさっさと当たって死んでしまおう。
固く固く決意して、は次の会場へと、移動した。
だが現実とは厳しいもので、中々本人の思い通りに事は進まない。
(くっ……こいつら、邪魔!)
先ほどのこともあってか、ゲーム開始から4人はを護るかのように位置していた。
が前に出ようとすると、必ず誰かの背に庇われる。
普段ならば当然の如く盾にしただろうが、今は邪魔でしかない。
せめてもの救いは、相手チームが思っていたより頑張ってくれていることか…。
流石に、相手もリーグ優勝しただけあって、苦戦を強いられていた。
「くっそ〜〜〜!」
イザークが、バカバカと銃を乱射する。
だが、相手チームは素早く障害物に隠れ、それをやり過ごした。
チームワークも良くて、ミスがあっても近くの者が素早くフォローしている。
反対に、チームワーク最悪で今まで力ずくで勝利を勝ち取ってきたアスランたちの辞書には、『助け合い精神』という言葉は無い。
各々自分の欲望と計算の元に動いているため、フォーメーションもバラバラだ。
むしろ、と自分以外の野郎はヤられてしまえと、心の底で思っていたりする。
「――――っ!弾が……」
馬鹿撃ちしていたイザークの銃弾が、とうとう切れてしまった。
すぐさま投げ捨てて、小銃に切り替えるが、このままではそれもすぐに弾切れしてしまうだろう。
後ろにいるアスランたちの方を見ると、彼らもやはり弾切れで、マシンガンから小銃に切り替えていた。
それに引き換え、相手チームはまだまだ余裕でマシンガンを握っている。
弾の残量を考えていなかった自分たちの愚かさに、アスランは思わず歯噛みした。
じりじりと、相手チームが前進してきた。
アスランたちは自然と後退していくが、すぐ後ろには壁が迫っている。
だからといって、小銃一つで突っ込んでいくのはあまりにも無謀だ。
まずい。
このままでは、本当に負けてしまう。
アスランたちが焦る反面、は心の中で小躍りしていた。
(よっしゃ!これで1位は免れるっ)
負けるのは少々悔しいが、これで不合格に一歩前進した。
うきうきと、相手チームが自分たちを撃ってくれるのを待つ。
もう、相手チームの会話まで聞こえて来る距離になっていた。
「―――女はともかく、男は手強いぞ。気をつけろ!」
ぴくっ
「そうだな」
ぴくぴくっ
「まず、一番弱そうな女から狙うぞ!」
ぶっちぃっん
の中で、ナニかが盛大に切れる音がした。
目の前が、真っ赤になる。
「…………っざけんじゃないよ」
「?」
しゃがんでいた体制から、突然ゆらりと立ち上がったに、アスランが慌てて声をかける。
早く物陰に隠れるかしないと、このままでは的にされてしまう。
だが、は堂々と仁王立ちで、近づいてくる相手チームを睨み付けている。
相手チームも完全にを舐めてかかっているのか、銃を構えてはいるが撃って来る気配はない。
「なんだ、投降かぁ?」
にやついた笑みでそう問いかけてきた男に、は満面の笑みを見せた。
突然美少女ににっこりと笑いかけられ、頬を染めて動揺する相手チーム。
そして、その手に持っていた残量ゼロのマシンガンを、相手に向かって力の限り投げつけた。
「ぐあっ」
マシンガンは、まるでブーメランのように回転しながら勢いよく飛んで行き、男の首元に直撃する。
弾が無くてもマシンガンは鉄の塊。
相手を殴りつけたりする武器としてなら、充分まだ役に立つ。
銃を投げつけたと同時に前に猛ダッシュしたは、さらにその隣にいた男に、跳び蹴りを喰らわした。
「このっ!」
一瞬に二人をのしたに、ようやく事の次第を理解した相手チームが、銃を構える。
だが、普通の人間なら怯むはずの銃口にも、は微塵も動じずに突進していった。
左右に素早く跳びながら移動して、銃に狙いをつけさせ難くし、自分の生存率を上げていく。
そして至近距離から小銃で、もう一人撃ち抜いた。
蛍光緑の血糊が、べっとりと相手の胸に付いている。
生き残った他の奴等は、アスランたちがすかさず片付けていた。
「ふん、チェックメイトだな」
不適な笑みで、イザークが最後の一人を小銃で容赦無く撃ち抜くと、ゲーム終了のブザーが鳴り響いた。
(あ、やっちゃった……!)
我に返ったが頭を抱えても、すでに後の祭りである。
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+++あとがき+++
お、お待たせいたしました(吐血
やっと久留里的に一番の難関、サバイバル戦が終了しました;;
戦闘シーン、読むのは大好きなクセに、書くのは難し過ぎます。。。
表現力が貧困で、申し訳無いです;;
そしてとうとうぷっちんしたヒロイン(笑)
一瞬で3人ほど殺りましたv
嗚呼、ヒロインとしてありえない;;
こんな凶暴娘でも、意外に好きだと言って下さる方が沢山いて、作者としては幸せこの上ないですVv
宜しければ、次回も見捨てずにお付き合い下さいませ。
次回は、オレンジの髪をしたあの人がやっと登場予定(…は未定)
では、こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました!