〜お参りに出掛けましょう〜





「え〜?!ミゲルいないのぉ?」

アイマン宅にて、少女の声が高く響いた。

不満そうな声音だが、声質はどこまでも可愛らしく、綺麗だ。

その声に負けないような少しキツめだが、猫のような可愛らしい顔をした声の主は、

外見はコーディネイターの中でも上位に入る可愛らしい容姿をしているが、中身はそれとは裏腹に凶暴で腹黒だったりする。

は今回、短い休暇を利用して彼女の従兄、ミゲル・アイマンに逢いに来たのだ。

復讐・私刑・お礼参りという単語が目的に入っていなければ、大変可愛らしい行動だった。

「じゃ、どこにいるか解かります?」

はむくれながらも、心当たりが無いかミゲルの母である伯母に尋ねた。

この母方の伯母は、父方の叔母とは違い、全然怖くない。

むしろいつもを可愛がってくれるので、大好きだった。

「ごめんなさいね。あの子ったら、久しぶりに帰ってきたと思ったらすぐに出て行っちゃって……」

の母と同じ優しげな容姿をした伯母は、困ったように微笑んだ。

(ミゲルの奴…逃げたな?)

絶対、そうだと思った。

は実の父と従兄にハメられ、軍のアカデミーの試験を受けることになり、紆余曲折を経て晴れて来週から生徒として寮にぶち込まれる。

軍になんか入る気などさらさら無かったには、かなり痛い状況だ。

この恨み、晴らさでおくべきか…!

アカデミーの試験から帰ってきて、真っ先に向かったの実家に、父の姿は無かった。

すでに首謀者である父は、宇宙の彼方に高飛びしていたのだ。

なにせ地球連合軍との全面戦争が始まったばっかりだ。

アレでエースパイロットな父が駆り出されるのは、しょうがないっちゃしょうがない。

でも、悔しいものは悔しかった。

地球軍に討たれてしまえと怨念を送りつつ、まだ休暇中のミゲルの所に愛犬連れて鼻歌歌いながら来たというのに…!

消化不良で、気が狂いそうだ。

姉ちゃん、どうしたの?」

とことこと、ミゲルの弟が部屋に入ってきた。

少し生意気な所もあるが、そんな所も可愛らしいのは、半ズボンがよく似合う幼年学校の特権だ。

「ミゲル捜してんだけど…見なかった?」

「ああ、兄ちゃんなら、さっきまで僕とゲームしてたんだけど……」

突然『バックれる』って言って出てったよ〜

無邪気な子供のチクりに、は満面の笑顔で問いかけた。

「で、何処行ったか、解かる?」

「知らな〜い。その辺でのたれ死んでるんじゃない?

「そうねぇ。どこかの公園で、世捨て人になってなければ良いんだけど…

(やっぱ、この人たちとは血繋がってるわ)

あまりにもクールな肉親の答えに、は一瞬だけミゲルを憐れんだ。

イイ家族だね、ミゲル。

ザマァミロ!

「うぅ〜ん、じゃあ何処捜せばいいかなぁ…?」

心当たりも無いとなれば、かなり捜索範囲が広がってしまう。

とりあえず、このプラントの中にいるかどうかさえ判れば良いのだが…。

百基以上もあるプラントのどこかに逃げ込まれたら、お手上げだ。

「まぁ、少なくともこのプラントからは出てないと思うよ?」

「え?」

「財布、忘れてったみたいだし」

そう言って手に持っている兄愛用財布をひらひらと目の前にかざす弟。

本当に、イイ家族だ。

これなら、イケルかもしれない…!

は意気込んだが、このプラント内に範囲が限定されたといっても、かなり広い。

果たしてどこから捜せば良いのか……。

「クゥ〜ン?」

愛犬がふんふんと鼻先をの指先にくっ付けてきた。

「タマ」

名前を呼ぶと、ぱたぱたと尾を振りながら嬉しそうに擦り寄ってくる。

タマは利口そうにお座りしながら、じっと主人であるを見つめている。

もじ〜っと見つめ返す。

日に当たると銀色にも光る灰色の毛並みに、白くて鋭い牙、ふさふさの尻尾。

そしてつぶらな地球のように青い瞳。

そのつぶらな瞳が、主人に語りかけていた。

『私を使っておくんなまし』

実際タマがそう言ったわけではないハズだ。

が、にはそう聞こえてしまったんだからそうに違いない。

っていうか、もうそういうことにしておこう。

「よし、タマ!」

がしっと愛猫愛犬タマの頭を掴み、にんまりとヒールな笑みを浮かべる。

「今こそ野生の魂を呼び覚ませっ!!!」

そう、何も人間の手で探す必要はないのだ。

犬の鼻を、使えば良い。

は不気味な高笑いを漏らした。

ぐりぐり梅干〜とかやられながらのことなので、タマは物凄く迷惑そうだ。

は構わず、普通の人なら怯える位大きな愛犬を小突き回す。

「タマ、お前は誇り高きなんだっ!

犬である警察犬ができて、お前にできないハズは無い!

迷惑そうな顔をしている愛犬…いや、愛狼にそう言い聞かせながら、はミゲルの持ち物を物色し始めた。

もちろん、ミゲル捜索のための持ち物検査だ。

数分後、は愛狼タマを引き連れて、アイマン家を勢い良く出て行った。



空はどこまでも、晴れ渡っていた。















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+++あとがき+++
キャラとの絡みが皆無でゴメンナサイッ!
愛犬(愛狼?)はもう、趣味です。
大きいワンコ、大好きさ…!
そして気が付いたらイザークカラー(笑)
ちなみに名付け親は、相方ですv
ポチにしようか悩みましたがね(何

こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました!
あ、ちゃんとオールキャラになる予定ですので、ご心配なく…;;