『放課後、訓練場の裏手にて待つ。必ず来い。』







という、なんとも簡素な手紙が、私のロッカーの中に突っ込まれていた。


差出人の名前を見て、目眩がした。




『イザーク・ジュール』




そう、手紙の最後に記されていた。


(また、何か言われるのかなぁ…)


軍のアカデミーの中でも、常にbQを誇るイザーク・ジュール様は、何かにつけて私に突っかかって来た。

いつも顔を合わせれば嫌味は言われるし、見下されるし、五月蝿いし…奴に関わると良いことが無い。

とうとう呼び出されてまで何か言われる。


(…ひょっとして、この前の訓練の事か?)


この間、私がちょっとしたミスをしたおかげで、うちの班はアスランの班に僅差で負けてしまった。

同じ班だったイザークに、その後散々嫌味を言われた。

やっと収まってきたのに、また改めて言われるのかもしれない。


(じゃなかったら、あれか?いやいや、それよりもやっぱ……)


いちゃもんを付けられる覚えは、ありすぎるほどに有った。

文句を付けられるだけならまだ良いが『決闘だ!』とか叫ばれたらどうしよう…。

イザークなら、やりかねない。

行きたくは無いけど、行かないとまた五月蝿そうなので、行くしかない。

授業がすべて終了し、私は重い体を引きずりながら、果たし状(もう決定)に書かれていた場所に向かった。

















































「―――で、何ですか?」

只今訓練場の裏手で、すでに私を待っていたイザークに物凄い形相で睨み付けられてます。

彼らしくも無く、さっきから一言も口を利いていない。

普段なら『遅いっ!』とか一言何か言われそうなのに、それも無かった。



「………………」



イザークは、さらに無言で私を睨み付ける。

かなり、怖いです。

そんなにこの前の事、怒ってたんかい。


「……あ〜、だから、この前の訓練は私が悪かったってば」


無言の重圧に耐え切れず、私は素直に謝った。


「ごめん」


だがイザークは、小さく首を振って

「……違う。その事じゃない」

と、かなり予想外の事を言ってきた。

「へ?あ、じゃあこの間のプリン盗ったのまだ根に持って……」

「違う」

「じゃあ、ゼリー盗ったこと?」

「違う」

「じゃ、アイス?」

「違う」

訓練のことでも、プリンでもゼリーでもアイスでも無いとすれば何だろう…?

「あ、解かった!クレープだ!!」

違うっ!いい加減食べ物から離れろっ!!!」

「じゃあ、何よ?」

ここまで言っても、当たりが出ないなんて何だか面白くない。

「……それは」

イザークは、なぜか口篭る。

さっきまで叫んでたあの勢いは何処に消えたんだろう…。

「あ、もしかしてこの前のシュミレーションで勝っちゃったこと?」

でもあれは、イザークの実力が無かっただけだ。

そんな事で文句を言われたくない。

「あの時はたまたま不調だっただけだっ!次は必ず……」

「言いたいこと言ったんなら、私はもう帰るよ?」

さっさと寮に帰って、ご飯が食べたい。

「だから違うっ!」

「だから何が言いたいワケ?」

ハッキリキッパリ言ってくれなきゃ解からない。


「…………だから」


「だから?」


「……………………」


また、だんまりですかい。


「………………………ちっ」


いや、舌打ちされてもこっちが困るんですが。

「イザーク、どうしたの?何か変だよ??」

俯いてしまっているイザークの顔を覗き込んだ。

いつもより、イザークの顔が赤いのは気のせいだろうか?

「熱でもあるの?」

「違う。……ッ!!」

「!?」

イザークに、いきなり肩を強く掴まれた。

(何?!やっぱりアレは果たし状?)

だとすれば、かなりピンチだ。

このまま投げ飛ばされるかもしれない。

「イザーク!勝負なら正々堂々とっ!!!」

「そうじゃないっ!俺は………」

イザークの白い頬が真っ赤に染まり、アイスブルーの瞳は潤んでいて何だか色っぽい。

、俺はっ…………」




これは、もしかして―――




『ディアッカに突然告られてどうしよう?!』とか??」




私はありったけの期待を込めて、そう訊いた。




「ちっがーーーう!何でそうなるんだっ!!!」




イザークは、力の限り否定した。

……ちっ。残念、違うのか。


「それじゃあ、何?」

「だから………」

「?」

「………っもう良い!」

「え?」










「くっそぉーーー!覚えてろぉーーー!!!










そう叫びながら、イザークは私を突き放して走り去って行った。





「…………なんだったんだ、アレは?」


ナニを覚えとけと…?


結局イザークが何を言いたかったのか、解からず終いだった。









































その日の夜―――

イザークとディアッカの部屋では『愛の伝道師ディアッカの恋愛教室(仮)』が、ひっそりと行われていた。

「だからぁ、口で言えないならいっそラブレターで告白ってのも……」

「そんな女々しい事、できるかっ!!!」

面と向かって告白出来ないのも、充分女々しかったが、あえてディアッカは突っ込まなかった。

これ以上、この部屋でイザークを暴れさせるわけにはいかない。

「じゃあ、まず日頃の態度を改めろ」

日頃からに対して優しく接していれば、もアレを『自分に対する告白』と思えただろう。

決して、『ディアッカとイザークの恋愛相談』とは思わなかったハズだ。

(っていうかオレ、一体どう思われてるんだろう?)

女好きを自負しているディアッカとしては、かなり不本意だった。

「とにかく、はハッキリした態度で表さないと解からないんだから、常に優しくして……」

ふむふむと、ディアッカの言葉を真面目にメモるイザーク。

告白に失敗したその後姿は、リベンジに燃えていた。

!次こそは、覚えてろよ…!」














あの手紙を『果たし状』と判断したは、ある意味正しかったのかもしれない。




















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+++あとがき+++
微妙にディアイザ入れちまってごめんなさい(土下座
イザークもへタレだし…。
うちのサイトでカッコ良いイザークを読むことは、多分無いでしょう。
カッコ良い彼をお望みの方は、他の素敵サイトさまへ行った方が良いですよ〜。
へタレで憐れなおかっぱをお望みの方は、是非うちのサイトをご利用下さい(何
それにしても、突発で書いてこんなに早く書き上げられたのはかなり珍しいです。
って、わりと短いからですね(笑

こんな駄文を最後まで読んで下さり、ありがとうございましたv