ドクン





ドクン






ドクンッ












自分の心臓の音だけが異様に響く感覚。

その緊張の中で、は手に持っているアーミーナイフを握り直す。

うなじの辺りがぞくぞくする。

『来る!』そう思った瞬間、体が勝手に動いていた。


キンッ


硬質の音が訓練室に響く。

ナイフとナイフが交差したと同時に、は襲い掛かってきた相手の足を払い、地面に倒していた。


ビッ


「そこまで!勝者、ラコーニ隊、!」


電子音と同時に、審判の声が上がる。

は今押し倒した相手をぐりぐりと足蹴にしながら、ガッツポーズを決めた。




















んでもまれるな!






















「よくやったな、

と、ラコーニ隊長が痛いくらいにの頭を撫でながら言った。

それに続いて他の隊員たちもぐりぐりとの頭を乱暴に撫で回してくれる。

現在クルーゼ隊とラコーニ隊の合同演習。

「この程度、朝飯前ですよぉ」

アカデミーを無事卒業し、ラコーニ隊に配属になったは、かつての級友たちに向かって不敵に微笑む。

それにいち早くキレたのは、もちろんザフトのコケシ…こと、イザーク・ジュール。

「貴様ぁ!俺たちを馬鹿にする気か?!」

「別にあんたたちを馬鹿にしてるワケじゃないって」

イザークの鬼の形相にも怯むことなく、はひらひらと手を振って答える。

「ただ、ミゲルなんかに負けるわけ無いって言ってんの」

げしげしと、いまだに踏みつけている彼女の従兄に、さらに追い討ちをかける。

床に倒れて妹分に踏みつけられているミゲルは、すすり泣いていじけていた。

そんなミゲルの姿を見て、アスランとディアッカは『どうか成仏して下さい』と、そっと手を合わせるしかなかった。

「う〜ん、絶好調っ!」

もはや彼女を止められる者はいない。

「ふむ。流石ラコーニ隊だな」

クルーゼが今までの対戦結果の資料を眺めながら、ふむふむと頷いている。

エリート揃いのクルーゼ隊とは違い、真紅の軍服をその身に纏っている者は新人の以外いなかったが、ラコーニ隊の者たちは皆年配の軍の古株が揃っていた。

技術より、経験が問われる時もある。

その証拠に、今日の合同演習もクルーゼ隊に負けず劣らずの好成績を誇っていた。

「どうだね?、クルーゼ隊に入ってみる気は無いか?」

の肩に手を添えながら、いきなり堂々と引き抜きをはじめたクルーゼ。

仮面が異様に光って見えるのは、気のせいではないだろう。

「クルーゼ、頼むからやっと入ったうちの新人をたぶらかさないでくれ!」

ラコーニが、なおもを口説き落とそうとするクルーゼに釘を刺す。

クルーゼ隊はともかく、普通エリート新人が回されることは滅多に無いなのだ。

これでが引き抜かれたら、恨んでも恨み切れない。

さんってばモッテモテ〜Vv」

そんなラコーニの苦労も知らず(むしろ無視して)は両手を頬に添えて、一人悦に浸っていた。

「相変わらずですねぇ、

「ああ、そうだな…」

なんだか前よりパワーアップしている気もしないでもないが、アスランはあまり深くは突っ込まないでおいた。

































「さて、青少年、少女の諸君!」

夜も更け、今日はヴェサリウスにお泊りとなったラコーニ隊隊長は、自分の部下たちとクルーゼ隊の若きパイロットを食堂に集め、厳つい顔をにやりと不気味に歪ませて口を開いた。

「新年初めの訓練でもある本日の合同演習、実に充実した内容であった」

普段気さくなラコーニの改まった口調に、アスランたちクルーゼ隊は身を硬くした。

逆にたちラコーニ隊は、なぜかそわそわしながらそんな自分たちの上司を見つめている。

「で、本題に入るが…野郎共!うちの艦長とこの俺からのお年玉だっ!!!」

そんな言葉とともにドカンとテーブルの上に置かれた物体に、クルーゼ隊のエースパイロットは目を丸くした。

それと同時に、ラコーニ隊から歓声が上がる。

「待ってましたぁ!」

「隊長ってば素敵〜!!!」

「もぉ惚れちゃうっ」

そんな男たちの歓声をよそに、クルーゼ隊はこのノリに付いていけない。

ただただ目の前に置かれた物体を凝視していた。

「これって、やっぱ……」

「酒、だよなぁ?」

「ですよねぇ?」

どこをどう見ても、目の前に置かれたモノは酒瓶だった。

しかも、ありえないほど大量だ。

、こ、これは一体…?」

アスランは、すでに一升瓶を片手に握り締めているに恐る恐る問いかけた。

「ん?新年会に決まってんでしょ」

ほら、アスランたちもじゃんじゃん飲まないと〜と、コップに酒をどばどば注がれる。

「で、でも任務中じゃ…!」

「今日の任務は合同演習だけじゃん」

「軍は禁酒禁煙じゃ…」

「気にしない気にしない」

「気にするわっ!!!」

特に彼らは主力とも言えるMSパイロットなのだ。

こんな時に戦闘になったら、全員死ぬしかない。

「大丈夫、飲めば飲むほど強くなるから

「なるかっ!!!!」

どこの拳法だと突っ込むイザーク。

にときめいていた過去の自分など、すっかり忘れ去っている。

それほど、勢いの良い突っ込みだった。

「それに、うちの隊長と艦長の許可付きだし」

むしろ酒まで提供されて、推奨されてる。

「それに、皆もう飲んでるし」

「なにぃ?!」

イザークが仲間たちを見ると、すでに全員コップ酒をごくごく飲んでいた。

「お、お前ら何やってんだっ!!!!」

「まぁまぁイザーク、硬いこと言うなよ」

「貴様らっ!パイロットという自覚が無いのか?!」

ディアッカ、ミゲル、ラスティはもちろんのこと、アスランやニコルまですでに酒に手をつけている。

今やこの空間でアルコールが入っていないのは、イザークだけになっていた。

せめてもの救いは尊敬するクルーゼ隊長がこの席にはいないことか……。

「なんだぁ?そこの坊ちゃんは俺の酒が飲めないって言うのかぁ〜?」

と、すでに酔っ払ったラコーニ隊長に絡まれる。

誰が坊ちゃんだと叫びたい所だったが、上司に逆らうわけにはいかない。

「ほら、飲め」

コップから溢れるほど酒を注がれる。

隊長自ら注いでくれた酒だ。

直属の上司ではないが、やはりここは飲まないわけにはいかないだろう。

『イッキ!イッキ!』と囃し立てる周りの掛け声につられ、イザークはなみなみと注がれたコップを飲み干した。

そして、記憶がぶっ飛んだ。































「隊長のお茶目さんめ」

イザークに強制的に酒を飲ませた自分の隊長を、はそう評価した。

ラコーニ隊長がイザークに注いだ酒は、アルコール度数のかなり高いヤツだ。

それをコップ酒で一気飲みさせたのだ。

明日は二日酔いで悶え苦しむだろうと、ほくそ笑む。

隊長はすでに次のターゲット・ミゲルに酒を注いでいる。

もう酔っ払っているミゲルは、何の疑問も無くがぱがぱ嬉しそうに飲んでいる。

…ナムアミダブツ。

「楽しいですねぇ、新年会」

「……ニコル、さっき隊長が注いだ酒飲んでなかった?」

ニコルの顔も口調も酒が入っているとは思えないほどしっかりしていた。

ニコルはけろっとした顔で

「ああ、あんなの飲んだうちに入りませんよ

と、真っ黒悪魔の笑顔で言い切ってくれた。

「それより、に久しぶりに会えて、僕嬉しいです」

今度は真っ白天使の笑顔でに囁くニコル。

ここ最近、ラコーニ隊のむさいオジサンたちと一緒だったには、それだけで悩殺モノだった。

「くぅ〜っ!ニコル可愛いっVv」

はニコルをぎゅうっと抱きしめた。

天使の笑顔でもお腹は真っ黒なのにはこの際目を瞑ろう。

ぐりぐりと頬ずりまでする。

ニコルもニコルで嬉しそうにを抱きしめ返す。

この辺確信犯でもないこともないが、せっかくの宴だ。今日は許そう。

「あ〜!、オレもオレも!!!」

ディアッカが主張してくるが、は裏拳で一蹴した。

可愛くないモノに、興味は無い。

ふと目線を彷徨わすと、ラコーニ隊員(おっさん)たちに服を剥かれかけているアスランとイザークの姿が目に映った。

…嫌なモノを見てしまった。

見なかったことにしよう。うん。

は即座にその記憶を抹消した。

絶叫と歓声の中、彼らの夜は更けていった。





















明くる日、一般兵が見たモノは


転がる無数の酒臭い死体(二日酔いで悶え苦しんでいる)と


無残に剥かれたエースパイロットたち(こっちも二日酔い)と


仲良く眠るニコルとの姿(二人ともノーダメージ)だった。






























+++あとがき+++
キリ番4000をゲットされた、コケモモさまに捧げます。
『隊長込みのギャグ逆はーで、二コル落ち。戦闘有りの甘めで、季節もの。楽園』&『学園天国』ヒロイン設定』
とのリクでした。
こ、こんなんで良いですか?(ドキドキ
かなり無理矢理詰め込みました;;
クルーゼ隊長が一瞬しか出てこなくてごめんなさいっ!
クルーゼ隊長は宴会の時、きっと薬切れで悶え苦しんでて出られなかったんです(ホントに無理矢理
しかも全然甘くなくってごめんなさい;;
『学天』ヒロインは、最初っからクルーゼ隊ってわけじゃなかったんです。えぇ。無理矢理ですとも…!

コケモモさま、こんな駄文で良かったら貰ってやって下さい。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
コケモモさまのみお持ち帰りOKです!

COUNT部屋にはドリームメーカー1の方を置いてます。