カチャカチャ……カチャ………
ううっ…やばい、かも……
今 この瞬間がすべて
今まで散々遊んできたツケが一気に回ってきて、只今レポートの作成中です。
これを提出できなかったら、単位が取れません…!
しかも、〆切がどんどん迫ってきてるし。
嗚呼、もうやばい。やばすぎるよ。
今度こそ、進級できないかも…。
「………」
「ぎゃっ!!」
突然耳元で声をかけられて、マジでビビッた。
慌てて後ろを振り返ると、そこにはクラスメイトのキラ・ヤマトくんがいた。
「いっいきなり耳元で話しかけないでよ!」
そう叫ぶと、キラはぶ〜っとむくれた顔をした。
「さっきから何度も話しかけてたのに、全然気付かないんだもん」
「へ?そうだったの?」
本当に、全然気付かなかった。
キラは自分の存在に気付いてくれなかったことに、ますますむくれた。
「ごめん、ごめん」
謝ってみるが、キラの機嫌は一向に回復しない。
「ごめんってば」
「……それが謝る人の態度?」
「え?あぁっ!」
私の手は、いつの間にかキラの頬を突付いていた。
だってつい触りたくなっちゃうんだもん。
「…どっか遊びに行こう」
まだ不機嫌顔だけど、袖をちょいちょい引っ張って外へ促がすキラ。
つまり、それで帳消しにしてくれるってことですか。
「行きたいんだけどレポートが…」
そう、今はそれどころじゃないんです。
なんせ進級がかかっているんだから。
「えぇ〜?!僕より大事なレポートなの?」
「うん」
即答した。
っていうか、何様のつもりですか貴方は…。
そもそも貴方と私は、ただのクラスメイトの関係でしょうが。
「ねぇ、行こうよ〜!!」
「ダーメ」
縋り付いてくるキラを無視して、私は作業に戻った。
このままじゃ、本当に終わらない。
「〜!!!」
後ろから抱き付いてくるキラ。
いや、抱きついていると言うより、圧しかかってくると言った方が良いかもしれない。
「ええい!重いっ!!!」
振りほどこうとするが、キラは頑固に離れなかった。
しばらくもがいて、諦めた。
コーディネイターの力に、ナチュラルがかなうはずないし。
「〜、遊びに行こうよ〜」
上目使いに、可愛らしくおねだりするキラを、ひたすら無視するしかなかった。
こいつのペースに乗せられたら、絶対に進級できない。
フッ…………
「〜〜〜っ!耳元に息を吹きかけるな!」
力が抜けちゃうじゃないか!!!
「だって〜!」
「…今度遊んであげるから、ね?」
宥めるように言ったが、キラは
「やだ。今がいい」
『今 この瞬間がすべて』とばかりに、お得意のわがままを発揮してくれた。
って、どこのガキですか、あんたは。
可愛いし、おねだりはするし、わがままだし、頬プニプニだし………
本当に、16歳なのか疑問に思う。
「何のレポートなの?」
キラがパソコンの画面を覗き込んできた。
「この前授業サボった分……」
キラの質問に答えながら、ふと何かが引っ掛かった。
「…そういえば、キラもサボってなかった?」
いつも私がサボる時は、必ず一緒にサボっていたキラ。
っていうか、キラのせいでサボることが多いんですけど…。
当然、キラにもレポートがどっさり出ているはずだ。
「キラは、もうレポート終わったの?」
やっぱりコーディネイターだから、物凄いスピードで終わらせたのだろうか。
「え?そんなのやってないよ?」
「えぇ?!でも、それじゃ進級……」
できないんじゃないか?
私の疑問をよそに、キラは真っ白笑顔でとんでもないことをのたまってくれた。
「ちょっと裏ワザ使ったんだ」
「う、裏ワザ?」
そんなもんあったのか?
いや、普通無いだろ。
「……教授をたぶらかしたとか?」
ありえる。
こいつならやりかねない。
「まさか。イヤだよあんなおっさん」
おっさんじゃなきゃやったのか…。
「じゃあ、裏ワザって?」
「ん〜とねぇ……」
キラは、私のパソコンをカチャカチャと弄りだし、さかさかとネットに繋ぎだした。
そしてワケの解からない操作を、物凄いスピードでこなしていく。
「………これでよしっと」
「な、何が?」
私には、キラが何をやってるのか全く持って解からなかった。
「ん〜、大学のメインコンピューターに侵入して、履修記録をちょっと書き換えただけだよ」
は?
なんですと?!
「これでもう、単位余裕で足りてるし、レポートやらないですむよ」
にこにこと嬉しそうに話すキラ。
「ば、バレるでしょう?!」
バレたら即退学モノの行為だ。
裏ワザは裏ワザでも、かなりの掟破りだろう。
流石に、コレはやばい。
「バレないバレない。何度もやってるし」
私の心配を、キラは手をひらひらと振って軽く否定してくれた。
って、いつもこんなことやってんですか?!
どうりでいつも余裕で遊んでいるはずだ。
「じゃ、遊びに行こう?」
キラはパソコンをさっさと終了させて、私に向き直った。
おそるべし、キラ・ヤマト。
「う、うん」
すでにキラに手をガッチリ掴まれていて、もう逃げることは不可能だし。
しょうがない、付き合ってやるか。
キラに引きずられるようにして歩きながら、私はついつい呟いてしまう。
「………君の生き方を尊敬するよ」
今 この瞬間がすべて(byキラ・ヤマト
キラはその言葉を聞いて、にっこり笑って私に話し掛けた。
「」
「な、何ですか?」
何だかイヤな予感がする。
「僕たちもう、共犯だよね?」
予感、的中。
私はこの時のキラの爽やかな、そして真っ黒な笑顔を、一生忘れることはないでしょう。
+++あとがき+++
キリ番4444をゲットされた、彩野さまに捧げます。
『少し黒いキラ夢』とのリク内容でした。
少しどころじゃない黒さでごめんなさいっ;;
そしてタイトルはスーツCDから掻っ攫ってきたという適当さ。
歌詞の内容一つも掠ってないです。
お題の『解析』みたいなカンジで…とのことだったので、なんだか似たような話になってしまいました;;
ますますもってごめんなさい;;
彩野さま、こんな駄文で良かったら貰ってやって下さい。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
彩野さまのみお持ち帰りOKです!