今日は大好きな人の誕生日!

なんですが……


















着信

















髪型…完璧。

お気に入りの洋服…装着済み。

化粧…違和感も崩れも無し。

鞄の中身……問題無し。

プレゼント……バッチリ。

本日何度目か解からない確認を、更にもう一度する。

今日、3月1日は、私の好きな人、ニコル・アマルフィくんの誕生日。

デートの約束だってちゃんとしています。

準備も完璧。

後は待ち合わせ場所に行くだけ……なんだけど。


「も、もう一度確認しとこうかな〜?」


そう言いながら、また鏡に手を伸ばす。

もういい加減家を出なければ待ち合わせ時間に間に合わないのだが、なかなか家を出る気になれない。

そりゃあ、ニコルくんとのデートは楽しみだ。

プランだって、この日のために二人で仲良く立てたのだ。

映画を観た後、ショッピングに行って、最後に夜景の綺麗なレストランでディナー。

ベタベタだが、乙女として最高のシチュエーションと言えよう。

…………観る映画が、私の大っ嫌いなホラーでなければ。

ノロノロと、出来る限りゆっくりと鞄の中身を確認していくが、大したものが入っているわけでもないので、すぐに終了してしまう。

私はここ数日、何百回目になるかも解からない盛大な溜息を吐いた。

霊感なんてものは一切無い…鈍感といっても良いほど鈍い自分だが、昔っから『お化け』とか『幽霊』は大っ嫌いだ。

その手の話は絶対聞かないようにしているし、テレビの心霊映像なんかも、かけた瞬間チャンネルを変える。

そんな自分が、ホラー映画…しかも、史上最凶に怖いという噂の映画(2作目)なんて、観れるわけがない。

ニコルくんも、もちろん私のホラー嫌いは知っているのだが……。


タ・タ・ラタ タ・タ・ラタ〜♪


「ひぃっ!!!」


突然鳴り出した聞き覚えの無い…いや、ある意味聞き覚えの有り過ぎる携帯の着信音に、マジでビビる。


「なななななななに?!なんでこの曲入ってんの??!!」


この、微妙な不協和音を醸し出している着信音は、アレだ。今日観に行く映画のテーマソングとも言うべき曲だ。

嫌な汗が、背中からダラダラ流れる。

死ぬ。

この電話に出たら、自分は死ぬ!!!

着信画面に自分の名前が出ていたら、絶対だ。

3日後には、確実に死んでしまう…!

だが、着信画面に映し出された人物の名前に、一気に脱力する。

私は、ようやく携帯の通話ボタンをぽちっと押した。


「………はい、ニコルくん?」


『はいv』


心底嬉しそうな相手の声に更に力が抜けて、その場にへなへなと座り込んでしまう。


「あの、私の携帯弄った?」


『あ、解かりました?手動で入力するの結構手間だったんですよ〜』


その言葉に、目の前の後景が滲んで見えた。

泣いちゃダメ。これからデート…!


『せっかくこれから観に行くんだから、気分も盛り上げておこうかなぁって……』


そんなお気遣いはいりません。

そして絶対音感の才能を、そんな所で無駄に使わないで下さい。


『ほら、この間前作のヤツ観た時、さん物凄く怖がってたじゃないですか』


そう、今日観る映画が決まった次の瞬間には、ホラー上映会が開催されたのだ。

ニコルくん曰く、私のホラー嫌いのリハビリと前作の予習と復習だとかで、結局目も耳もふさぐ事を許されず、全部観てしまった。

せっかく二人きりだったというのに、あの時の事は………思い出したく、無い。


『だから、今日のさんのリアクション、楽しみなんですよ』


あ、なんだかまた目の前が滲んで……。


『あ、さん今どこにいるんですか?そろそろ開演しちゃうんですけど』


「……やっぱり、行かなきゃダメ?」


『駄目です』


そんなさっくり却下しなくても良いじゃん…。


「じゃ、せめて違う映画にしない?」


さん、今日は僕の誕生日なんですよ?』


出来る限りのわがまま聞いてくれるって、言ったじゃないですか。


言った。確かに言ってしまった。

過去の自分に、ひたすら後悔する。

こんな事になるんなら、下手な事言うんじゃ無かったよ…!


さん……』


いつもより、少し声を低くした、ニコルくんの声音。

きっと今、彼が目の前にいたら、上目遣いでこっちを見ているんだろう。

ついつい妄想想像してしまう。


『僕とデート、嫌なんですか?』


ぶわっ

妄想のニコルくんの周りに、大量のお花が咲いた。

そんな甘えた声、出さないでよ。

妄想が止まらないから…!


「嫌なワケないじゃないっ!……行くよ、絶対行くから!!!


『本当ですか?』


とたんに明るくなったニコルくんの声。

嗚呼、もしかしたら自分は、踊らされているのかもしれない。

そんな考えが一瞬頭をよぎったが、思考を停止させる。

それ以上考えちゃ、ダメ。


「うん。すぐ行くから、待ってて」


携帯を切り、鞄を引っ掴んでドアにタックルする。

好きな人にあんな声で言われたら、もう何が何でも行くしかないでしょう。

こうなったら、開き直るしかない。

ほら、お化けだってキタローとか、良いヤツもいっぱいいるじゃん!(←妖怪です)

先の事はあまり考えないようにして、ニコルくんに逢ったらまず最初に、おめでとうを言おう。







、覚悟を決めて行ってきます!


















+++あとがき+++
ニコル大魔王様、お誕生日おめでとうございます!!!

ヒロイン完全にニコル様に踊らされてますね…。
二人の観る映画は、もちろん某ホラー映画です。
ビデオ持ってるんですけど、ぶっちゃけ私まだ観てません。
ホラー、うちの家族そんなに好きじゃないので、観ようと言っても多分逃げられます。
あらすじだけでもと公式HP見たんですけど……FLASHだけでも怖いっ;;
アレを1人で見る勇気、正直無いです。。。
なので、文中に何かおかしな箇所があっても、見逃してやって下さい;;

こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました!