11:イナイセカイ
その島は、とても美しかった。
柔らかな風が、潮風を運んでくる。
空は私の心とは裏腹に、青一色。
むしろその鮮やかな青が、哀しく思えるほどだ。
島を囲む海も、宝石みたいに綺麗な碧。
普通なら、この自然に感動を覚えるのだろうが、今の私にそんな余裕は無い。
とうとう、来てしまった―――
島の中を、少し歩いてみる。
地面には色とりどりの花が咲き乱れ、私の持ってきた白一色の花束を異質なモノにした。
『―――さん』
不意に、懐かしい声が聴こえたような気がして、慌てて周囲を見回すが、私以外誰もいない。
当たり前だ。ここは無人島なのだから。
いるとするなら、島に棲む小動物たちや、海の魚たち位なものだ。
彼がいるとは、どうしても思えなかった。
優しい風が、撫でるように私の髪をくすぐる。
急に、彼がここにいるような気がして振り返るが、やはり私以外誰もいない。
「……ニコル」
名前を呼んでみると、淋しさだけが募った。
「ニコル」
縋るようにもう一度呼んでみるが、返ってきたのは木々の擦れる音だけだ。
どんなに呼んでも、応える声が無いのは解かっていたが、それでも一度名前を呼ぶとどうしても止められなかった。
「ニコル」
何度も何度も、彼の名を呼んでみるが、やはり応えは返ってこない。
仕方が無い。彼は眠っているのだから。
そう、この美しい島で、彼は一人永遠に眠っている。
木々の間を抜けると、岩だらけの海岸になった。
どうやら、もう反対側の海岸まで来てしまったらしい。
何気なく海岸を見渡すと、黒いモノが目に映った。
「――――っ!」
思わずそれに駆け寄ってみると、予想していたモノが目の前にあった。
「…………ブリッツ」
彼の乗っていた機体の欠片。
かつて『ブリッツ』と呼ばれ、戦場を彼と共に駆けたモノ。
彼と共に、散ったモノ。
大きな欠片から、小さな欠片まで、無造作に散らばっている。
もう、あれから何年も経っているからだろうか、苔が生えて自然と一体になりつつあった。
「ニコル……っ!」
やはり、彼はここで散ったのだ。
最初、アスランに言われても、ニコルが死んだなんて、信じられなかった。
信じたく、なかった。
だから、拒んで拒んで―――
戦争が終わっても、まだ受け入れられなくて――――
戦後処理を理由にして、ずっとここから逃げてきた。
でも、それだと駄目だと思って……。
やっと、ここに来たのに。
今まで耐えてきた涙が、次々と零れ落ちた。
どんなに彼が大切な存在であったのか、思い知らされる。
「ニコル、どこ?」
君は、ココにいるのですか?
天国にいるのですか?
それとも、地獄にいるのですか?
私は、どこに逝けば良いのですか?
君の処へ逝きたいのに、そこへ逝く道が解かりません。
どうすれば、君に逢えますか?
「約束、したのに……」
ずっと一緒にいるって――――
それなのに、君はいなくなって――――
『さん』
瞳を閉じれば、今も君の声が鮮明に聴こえてくるのに。
『これからも、ずっと一緒にいましょうね?』
今も、君がそばにいる気がするのに。
「ニコル」
瞳を開けると、ニコルはいなくて、海と空の蒼が、瞳に焼きついた。
風が優しく頬を撫でたが、君が涙を拭ってくれるわけじゃない。
泣きたくなるほど綺麗な世界が、霞んで見える。
「ニコル」
君ノ『イナイセカイ』ニ、意味ナンテ無イヨ
+++あとがき+++
は〜、やっと11題終わりました(吐血
そして初☆悲恋。
……ヒロイン、暗っ!
かつてないほど暗いですよ。自殺願望さんですよ(笑)
に、苦手な方、本当にスミマセン;;
コレだけは、書きたかったんです…!
ぶっちゃけ、お題もコレ書くためだけに挑戦しました。
滅茶苦茶気合を入れて書くつもりだったのに、学校の図書室で2時間足らずで書き上げてしまった事は内緒です☆
せめてもの贔屓に、背景コレだけ別です(笑)
素敵サイト様のような悲恋が書けない〜;;
自分の文才の貧困さに、涙が出てきます。。。
こんな駄文をここまで読んで下さり、ありがとうございました!
長々と、2ヶ月以上かけてしまってごめんなさいスミマセン;;
キャラの生誕祭に、2ヶ月もかける奴はそうそういないでしょう(笑)
またこんな企画をやり出したら、どうか生暖かく見守ってやって下さい。
今度は、こんな長くならないよう努力致します(本当かよ
それでは、お付き合い頂いて、本当にありがとうございました。