06:トラブル発生




































「――――セッちゃん?あたし…うん、


目の前に立ちはだかる人物を見つめながら、シュカは本日遊ぶ予定の友人に電話をかけた。


「…ごめん、今日ちょっと遅れそう」


それだけ言うと、ピッと携帯を切る。

そして、目の前の少年に恐る恐る問いかけた。


「え〜っと、何かなニコル?」


目の前の少年――ニコルはにっこりとに向かって微笑みかけた。

天使のような笑顔だが、お腹の中は悪魔のように真っ黒なのをは知っていた。

現在、天使のような悪魔の笑顔のニコルは、に微笑みながら外へと続く扉を通せんぼしてふさいでいる。

明らかに、を外へ出さないために。


「あたし、これから友達と約束があるんだけどな〜?」


だから、早く、退いてくれ…。

そんな心の呟きも絶対よく解かっているはずなのに、ニコルは退く気配がまったく無い。

長い長い沈黙の後、ニコルはようやく口を開いた。


「………さん、僕との約束忘れてませんか?」


「へ?」


やくそく?

何のことですかと訊こうとしたが、ニコルと目が合った瞬間、開きかけた口がそのまま固まった。

これは絶対、怒ってる…。

ぺっとりと笑顔が顔に張り付いてはいるが、オーラがそれを物語っていた。


「この間、今日の休暇は一日中僕と一緒にいてくれるって約束したじゃないですか」


「………………そんな約束、したっけ?」


「しました」


は、懸命に記憶を探ったが全然覚えていなかった。

ニコルとの約束ならば、大抵は覚えているはずだ。


「先週の金曜日の夜に、ちゃんと約束したじゃないですか」


ニコルのその言葉に、首を傾げる。

金曜の夜……確か、皆とミゲルの部屋に集まって酒盛りをしていた。

そこにニコルがいたのは確かだ。

そしてかなりイイ具合に酔っ払って…………その後の記憶が、無い。

気づいたら、自分の部屋で寝ていた。


「……もしかして、すごく酔っ払ってた時?」


「はいv快くOKしてくれましたVv」


「…………………………」


そりゃあ、イイ感じに酔っ払ってりゃなんでもほいほい頷くに決まっている。

(外見だけ)可愛いニコルのお願いなら、なおさらだ。

には、その時の後景が容易に想像できた。


「…………え〜、酔っ払いの戯言と処理してく「できませんv」


ニコルは、言い終わる前に眩しいほどの笑顔で即答してくれた。


さんってば、僕をこんなカラダにしておいて、責任取らないつもりですか?」


「どんなカラダよ……」


ハンカチ片手によよよと泣き崩れる真似をするニコル。

明らかに、昼ドラの観過ぎだ。


さんってば、酔った勢いで僕にあんなことやそんなことまでしてっ…!僕、もうお婿にいけません!!」


もちろんはそんなこと一ミクロンも覚えていない。

やっていないと思う。

そう、きっとやっていない。

むしろコレはニコルの演技だろうと思う。

だが――――

絶対、やっていないと言い切れない自分が哀しい。


「今日はずっと一緒にいてくれなかったら…僕、このこと誰かに話しちゃいそうです」


「お、脅す気?!」


可愛い顔してさらりと脅迫してくれたニコルは、将来絶対大物になるだろう。

……いや、すでに大魔王の称号を得ている。


「責任、取ってくれますよね?」


「……………………あい」


取らなかったら、きっと艦内中に言いふらされるに違いない。

は、素直に頷くしかなかった。

のろのろと携帯を取り出して、ぷちっと履歴ボタンを押す。


「――――セッちゃん?…うん、


久しぶりに逢えるはずだったプラントの友人に、またしばらく逢えない。

観るハズだった映画も、楽しみにしていたショッピングも、お預けだ。

それを思うと、の瞳には自然と大粒の涙が浮かんでいた。


「ごめん、今日やっぱ行けそうに無いや」


さようなら、薔薇色の休暇――――


「……うん。トラブル発生したの」
































+++あとがき+++
ニコル様が壊れてます;;
ハンカチ片手によよよと泣き崩れるのは、きっとアスランかディアッカかミゲル、それかラスティ辺りだと(多っ
あ、もちろんヒロインはあんなことやそんなことは(多分)やってませんよ!
あれは、ニコル大魔王様の迫真の演技です。
最近白ニコ率が高かったので、自分的に黒ニコ書けて満足だったり(オイ

こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました!