01:天使なんかじゃない!
ザフト軍天下のエリートパイロットの一人、ニコル・アマルフィ(15)
彼を初めて見た時、不覚にも高鳴る胸を押さえられなかった。
ふわふわで柔らかそうな緑の髪。
つるつるすべすべぷにぷにのお肌。
男の子なのにピンク色の可愛い唇。
優しそうなオレンジ色の瞳。
天使が舞い降りてきたかと思った。
それなのに…コレは何?
「あの…ニコル?」
「なんですか?」
目の前には、天使の笑顔。
いや、見掛けだけ天使で、実際は悪魔の笑顔。
それが今、超至近距離にある。
「コレは一体、どういう事ですか?」
両手を目の前に持ち上げると、ジャラリという金属音に続き、手首に繋がれた手錠が揺れる。
「だって、さんってば、こうしておかないとすぐに逃げちゃうじゃないですか」
「だからって、手錠なんて…!」
一体どこから持ち出してきたのだろうか。
ちょっと油断したら、ガチャンと嵌められてしまった手錠。
かなり頑丈にできていて、抜け出そうにも抜け出せない。
「冗談やめて、逃げないから外してよ」
「嫌ですv」
笑顔で即答され、泣きたくなった。
私が何したって言うんですか?!
少なくとも犯罪者になるようなこともしていない…ハズだ。
「嫌だなぁ、さんは充分犯罪者じゃないですか」
素で人の心の中を読まないで下さい…。
「僕の唇を奪ったんですから」
「誤解を招くような発言はやめてくれる?」
「でも、事実でしょう?」
「いや、人形でだし」
ちょっとふざけてどっかのCMみたいに『奪っちゃったv』って指人形でニコルの唇にちょこっと触れただけだ。
それだけでこの仕打ちは何だろう…。
「充分、逆セクハラですよ」
「うぅ……」
そう真顔で言われると、反論できません。
自業自得…なんだろうか。
「そうですよ」
またしても人の心を読んだニコルは、にっこりとそして真っ黒く微笑んだ。
怖い…!
誰かヘルプと目線をあちこちに漂わせてみるが、皆目を合わせようともしてくれない。
巻き込まれたくない気持ちも解からないでもないけど、それでも仲間かと言いたくなる。
「…あ、ゼルマン艦長!」
たまたま談話室の前を通りかかったゼルマン艦長を必死で呼び止める。
この場を救ってくれるのは、もう彼かクルーゼ隊長位しかいないだろう。
「……何をやってるんだね?君たちは」
私の呼びかけに答えてくれた艦長は、私の手に嵌められている手錠を見て、訝しげにそう訊いた。
「た、助けてくださ…むぐっ!」
事情を説明しようとしたら、ニコルに口をふさがれた。
むしろ、鼻までふさがれて息ができません…!
「休憩時間のちょっとしたお遊びですよ」
真っ白天使のその笑顔と言葉に、ゼルマン艦長はあっさりと騙されてくれた。
「そうかね?じゃあ、今のうちにしっかり息抜きをしておきなさい」
「はい」
ニコルじゃなくて私を見て下さいよっ!
手錠!手錠されるんですよ、艦長!
あぁっ!お願いだから行かないで〜〜〜!!!!
そう叫びたくても、ふさがれた口からはくぐもった声しか出てこない。
っていうか、酸欠になってきた…。
「――――さて、さん」
ようやく口元をふさぐ手を外してくれたニコルは、酸素を懸命に取り入れる私に話しかけた。
「僕の部屋、行きましょうか」
その言葉とともに、ひょいっと私を抱き上げて談話室を出て行こうとするニコル。
流石はエースパイロットの一人。
見かけによらず、相当の力持ちだ。
…って感心してる場合じゃなくて!
「ちょっ…ニコル、部屋行って一体何を?!」
一応ばたばたと暴れてみるが、ニコルはびくともしない。
「決まってるじゃないですか」
すたすたと歩きながら、ニコルは白い天使の笑顔を私に向けた。
その天使の笑顔に、一瞬ドキッとしてしまうのは、いつもの哀しい習性故。
「セクハラ返しですよv」
さらっと爆弾発言を天使の笑顔でかましてくれたニコル。
嗚呼、なんだか眩暈がする。
呆然とする私をよそに、ニコルは軽い足取りで自室への道を歩いていった。
やっぱり……
天使なんかじゃない!(むしろ悪魔だ)
+++あとがき+++
もう、強制終了です。スミマセン;;
自分でやった事とはいえ、11もニコル夢を書けるのか不安になってきました;;
どうしてこう、黒い人は最後に裏逝き強制終了になるんでしょうか?(訊くな
表なのに、手錠の時点でヤバイ事になってます。
大魔王様の暴走のせいなので、私は悪くないですよ(オイ
嘘です。悪いのはすべて私です。呪わないで下さいニコル様;;
こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました!