03:最小
「…何だと貴様」
「何よおかっぱ」
今日も何気ない一言から、二人の口喧嘩が始まる。
「大体、そんな小さいクセに、ザフトのパイロットだなんて、やっていけるワケないだろ」
「小っさい言うな〜!!!」
『人の気にしていることを〜!』と、突っかかってくるを、イザークは鼻で笑う。
「悔しかったら俺よりでかくなってみろ」
無理難題を突きつけるイザーク。
はこの艦内でも一番小さく、イザークとは20cm以上も身長差があるのだ。
しかも、イザークは男で、は女だ。
がイザークより大きくなることは、物理的に無理である。
子供地味たことをいうイザークに、思わず殴りかかりそうになる。
だがそれは、もう一人の同僚の手によって抑えられた。
「まぁまぁ、そう熱くなるなって」
「ディアッカ、離してよ!」
「ほら、どうせイザークと本気でやりあったってかないっこないんだから……」
「そんなの、やってみなきゃ解かんないじゃん!」
どこまでも好戦的なに、イザークも受けて立つ。
「ふん。やれるもんならやってみろ」
「言われなくても殺ってやる!」
今度こそ本気でイザークに殴りかかるを、ディアッカは体を張って静止した。
「だから〜っ!やめろって!!!」
「離せ〜〜〜!!!!」
「いてててててっ」
が暴れるので、それを止めているディアッカは顔を引っ掻かれたり足を蹴られたりと、ボロボロになる。
このままでは身が持たないと、ディアッカは最後の手段に出た。
「食堂にあるオレのプリン、食べて良いから!」
その言葉に、じたばたともがいていたの動きが、ピタリと止まる。
「本当?」
「ああ」
だから頼むから、これ以上暴れるのはやめてくれ。
そんなディアッカの切なる願いが通じたのか、は素直に談話室の出口へと向かって行った。
イザークとの喧嘩はすっかり忘れているのかと思いきや、部屋から出る時にしっかりとイザークに向かってあっかんべーを忘れない。
ただ単に、先程のことは保留にしただけらしい。
だがこの分なら、食堂から帰ってきた時にはさっぱりと忘れていることだろう。
根が単純…いや、可愛らしい性格で良かったと、ディアッカは心底そう思った。
完全にが談話室から姿を消すと、ディアッカは深々と溜息を吐き、銀髪の同僚を見やった。
「余計なことを……」
と、イザークはぶつぶつと呟いていたが、その不機嫌そうな表情の本当の意味をディアッカは知っていた。
ぶっちゃけイザークは、のことが好きなのだ。
あんな口喧嘩をするつもりも、最初から無かった。
だが、いつも条件反射でつい嫌味を返してしまい、二人の間には喧嘩が絶えることが無い。
と盛大な喧嘩をした後、イザークは内心ありえないほど落ち込んでいたりするのだ。
そして今も、強がってはいるが心の中では絶対に落ち込んでいるハズだ。
イザークから恋愛相談をされたディアッカは、最初こそ『あのイザークがに…?!』と心底驚いたが、今ではそれなりに応援している。
だから、己の身体と、楽しみにしていたプリンを犠牲にしてまで、二人の仲がこれ以上悪化しないように、喧嘩も止めた。
それなのに―――
「イザーク…いい加減にそろそろアプローチしないと、一生片想いのままだぞ?」
そう、はイザークの気持ちなど全然気付いていない。
むしろ、イザークを毛嫌いしている。
恥ずかしがってこのまま態度を変えないままでいれば、絶対に横から掻っ攫われるだろう。
そうなれば、自分の部屋がイザークの手によって滅茶苦茶に荒らされる…!
ディアッカは、実はそれを一番怖れていたりした。
「だから、少しは素直になれよ」
「解かってるっ!」
そうは言っても、イザークの性格では中々実行に移せないだろう。
ディアッカはまだまだ二人の喧嘩の仲裁役になりそうだと、諦めの溜息を吐いた。
いつの日か
もう少し素直になることが出来たなら
『最小』の君に、『最大』の愛を――――
+++あとがき+++
相変わらずイザークへタレだぁ…(吐血
そしてやっぱり出張るディアッカ。
イザークをもう少し叫ばせたかった(何
こんな駄文をここまで読んで頂き、ありがとうございました!